「今日は皆で左翼教師を批判しましょう!」

先日ブログ記事に書いた「歴史教育への批判を現役歴史教師にぶつける会」について、

少しコメントしておきたいと思います。

これは、2015年9月26日(土)に浅草橋の某所で行なった勉強会です。

 

当時安保法制をめぐって賛成派・反対派の激しい応酬が行われていたわけですが、

私にはどうも、議論が噛み合っていないように見えたんです。

双方に、相手が悪、相手がバカ、相手が不勉強、という悪意的解釈や嘲笑が溢れているように見えたんです。

さらに、私の周りでは、とりわけ反対派に対する厳しい声が大きく、

安全保障についての考えを深める教育をしていないからなのではないか、

戦争について悲惨さばかりを強調する教育をしているから、国の安全を守ることよりも戦争を嫌うことを優先する国民が増えるのではないか、

などの疑問の声が上がっていました。

そこで、自分のフィールドである歴史教育で、そういった、戦後の歴史教育に批判的な人たちを集めて、自分自身をサンドバックにしてもらおう、と思ったのです。

全部答えるよ、と(反論・共感含めて)。

 

形式としては、私がいくつかプレゼンをして、それに対して意見や批判をもらって、という形をとりました。

プレゼン中でも意見したくなったらいつでもOK、というルールで。

司会者が私の紹介の際に、「今日は皆で左翼教師を批判しましょう!」と言ってくれたのがとても印象深かったです。

 

13:00〜 第一部:歴史教育の意義
 - 自己紹介および今回のイベントの紹介。5分
 - アイスブレイク・・・学校での歴史教育が一切無かったら?
 - 私のプレゼン(歴史教育の意義について。15分)
休憩(この間に、今の歴史教育に対する批判点を紙に書いて報告者に提出)
14:00〜 第二部:歴史教育の方法
 - いくつかの批判点についてのコメント
 - 私のプレゼン(歴史教育の方法について。20分)
 ※プレゼン中も討論
15:00〜 第三部:歴史教育の内容
 - いくつかの批判点についてのコメント
 - 私のプレゼン(今の歴史教育の内容への批判。20分)
 - 私のプレゼン(「左翼」「自虐」「反日」批判への反論。20分)
 ※プレゼン中も討論
 - まとめ

 

ちなみに、集まってくれた人たちが上記の「休憩」の間に紙に書いてくれた現行の歴史教育への批判には、以下のようなものがありました。

 

 - 文化史の学び方が、タイトルの羅列ばかりでどうしようもない
 - 科学史をもっと重視すべき
 - (とくに近代史は)様々な主体の活動を無視して一直線で歴史を書きすぎ(「日本は・・・」「アメリカは・・・」のような大きな主語で語ることへの批判)
 - なぜ「旧石器時代」から始める必要があるのか
 - 史料を読む機会が少ない(実証を重んじるのが歴史学のはずなのに)
 - (とくに近代史は)政治経済や倫理の知識が不可欠なのでは
 - (教科書は)どういう能力をつけさせたいのかがわからない
 - 歴史の見方が軽視されている。どのようにして、そのような教科書の記述を導き出せるのか
 - 客観的なテストは不適なのでは(レポート課題を増やすべき)
 - 通史を小・中・高と3回も繰り返す意味は?
 - 政治史の比重が大きすぎ。社会経済史や、学問の歴史などの扱いが低い
 - (とくに世界史は)国家の歴史、政治の歴史ばかりで、労働者や農民などの営みが見えにくい

 - 現代史の扱いの少なさ
 - 暗記偏重
 - 事象を追うばかりで、歴史的思考力を鍛えるところまで行っていない
 - 「大東亜戦争」がどうして発生したのか、など、もっと踏み込んでほしい
 - 戦前の活動家についてもっと深堀してもいいのでは(五・一五事件二・二六事件など)
 - もっと論文問題を課すなど、歴史の背景について問う問題を出して欲しい
 - 歴史的思考力という目的と、評価制度(暗記中心のテスト)がマッチしていない
 - もっと今とつなげてほしい
 - アフリカ軽視(ヨーロッパ中心)

 

実は、上の批判・疑問などすべてについて、私は、現在改善済みであるか、あるいは改善に向けてトライしているか、(問題提起的なものについては)思考中であるか、のいずれかです。

 

私自身は、今までいろいろなところで研究報告や実践報告をしてきましたが、これほど緊張した会はありませんでした。

場合によっては自分が今まで信じてきたものを全部ひっくり返す必要があるかもしれない、という恐怖があったからです。

 

しかし、この会を経て、そういう恐怖がなくなりました。

論破されることが恐怖だと思うこと自体が愚かだと思うようになりました。

 

是非、「左派」「護憲派」「リベラル」「右派」「改憲派」「保守」なんでも構いませんが、自分の思想や意見が正しいと自信を持っている人がいたら、やってみてはいかが?自分の思想や意見に批判的な人たちばかりを集めて、議論してみるのは楽しいですよ!

 

8月の大会では、そういう思想間の対話がメインというわけではありませんが、

思想間の対話も含め、様々な立場の違いを超えた対話を試みたいですね。

 

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今年の夏の歴教協全国大会in埼玉(8/3〜8/6)の詳細は以下のサイトをご参照ください。

sairekkyo.wixsite.com

 

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